誘惑プリンセス【BL】
 取り敢えず、買ってきた食材を一旦冷蔵庫にしまう。

 人数が増えてしまっている訳だから、予定通りのモノを作ったら足りなくなりそうだ。

 冷蔵庫の中身を確認していると、ぺたぺたと足音が近付いてきた。

 そんな足音を立てるのは間違いなくヒメだ。


「酒のつまみになりそうなモン作ってやるから、ちょっと待って……」

「俺さ、カレー食いたいんだよね」


 俺の言葉に被せるようにして、カレー、という単語が降ってきた。


「酒飲みながらカレー食うのか?」

「いいじゃん。俺、恭介が作ったカレー好きなんだけど」


 ──好きなんだけど。


 そういう、何気ない言葉に反応してしまう自分もどうかと思うけど。

 嬉しいと思ってしまう事実は消せない。


「……30分待てるなら」


 俺がそう言うと、ヒメは小さくガッツポーズして部屋に戻っていった。


 カレーで喜ぶとか、小学生かよ?


 心の中だけで突っ込んで、俺は料理に取り掛かった。
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