誘惑プリンセス【BL】
「俺が買ってきた酒は飲めないのか?」

「どこの酔っ払いだ?」

「まだ酔ってませんー! 1本目で酔う訳ねーだろ」

「お前の絡み方が既に酔っ払いだっつーの」

「煩ぇよ。良いから飲めって」


 言いながら、ヒメがまた俺の頬に缶ビールを突き付けてくる。

 よく見てみれば、その缶はヒメの飲み掛けで、勢い良く腕を伸ばして来る所為でビールが少し床に零れていた。

 このまま調子に乗ったヒメがいつか缶をひっくり返す気がして……。

 俺は、仕方なく飲み掛けの缶ビールを受け取った。


 カレーにビール……。


 自分の中では有り得ない組み合わせに、缶を眺めたまま考えていると、缶チューハイに口を付けたヒメがポツリと呟いた。


「間接チューくらい気にすんなよ」

「……俺を怒らせたいのか?」

「恭介が怒ったって怖くねーし」


 募る苛々に、思わず缶を持つ手に力が入った時、陣くんが突然「あ!」と声を出した。

 その声に、俺もヒメも陣くんを見遣る。
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