誘惑プリンセス【BL】
 俺は勝手に納得して、空いた皿を片付け始めた。

 テーブルが空けば、ちょっとしたつまみとか置けるしな。

 台所に立っていると、空いた皿を持って陣くんがやってきた。


「騒がしくして、すみません」

「騒がしいのはヒメだけだから、気にしないでいいよ」


 陣くんと話してると、何だかほっとする。

 ヒメがあんなテンションなだけに、陣くんとの温度差が何だか気になる。

 この2人、バンドでちゃんと上手くやっていけてるんだろうか。


「恭介さんには悪いですけど──」


 徐に、陣くんが話し出す。


「俺も、まさか恭介さんが自分と同い年だとは思いませんでした」

「陣くんも俺のことオッサン扱いするのかよ……」

「しませんって。ただ、ヒメノってちょっとキツい性格してるから、ヒメノよりかなり大人な人じゃないと一緒に居られないんじゃないかって思ってて」

「俺、全然大人なんかじゃないし、ヒメとはしょっちゅう言い合いしてるけど?」

「多分ですけど、ヒメノには、恭介さんみたいに何でも言い合える人が合ってるんですよ」

「……朧さんは、どんな人だったの?」


 思わず聞いてしまった後で、後悔が襲ってきた。

 朧さんの事は、陣くんだって色々辛かった筈だ。

 軽々しく、口に出して良い名前じゃない。
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