誘惑プリンセス【BL】
 俺の表情に気付いた陣くんは「そんな顔しないでください」と、柔らかく声を掛けてくれた。


「朧さんは、ヒメノにも俺にも、特別な人だったから……」


『特別』


 その言葉に、大きな何かを感じてしまう。

 いや、俺なんかが感じたところでどうしようもないんだけど。


「恭介さんとは、全然似てないですよ。でも、2人とも、ヒメノの我が儘に負けない、っていうか、ヒメノに押されない所は、ちょっと似てるかも」


 いや、結構押されてると思うんだけど……。


「ヒメノのこと、よろしくお願いします」

「や……、よろしくって言われても……」


 何て言うか。

 手に負えなくなったダメ犬の里親を任されている様な気分になってきた。


 ホント、宜しくなんて言われても、困る……。

 俺に期待されても、な……。
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