誘惑プリンセス【BL】
「キスすんの、巧いね。なんか、意外」


 そんな風に褒められても、巧いかどうかなんて俺には分からない。

 甘えるみたいにして俺の肩に額をつけてくるヒメが、堪らなく可愛いと思えた。


「……恭介、シようよ。俺のこと、抱いて?」


 俺の耳元で、ヒメが艶っぽく囁く。


「抱いて、って……」


 この期に及んで戸惑う俺に、ヒメは優しく微笑んだ。


「大丈夫。男とだってキモチ良くなれるって、教えてやるよ」


 熱の籠った、潤んだ瞳に捕らえられて。

 俺はもう一度、触れるだけのキスを送った。


「恭介ので、めちゃくちゃにされたい。何もかも、忘れさせて……?」


 ──忘れさせて。


 その言葉が、俺を一気に現実へと引き戻した。
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