誘惑プリンセス【BL】
「忘れたいのは、朧さんのことか?」

「……何だって、良いだろ。恭介には、関係ねぇよ」

「関係あるから聞いてるんだ!」


 ヒメの細い両肩を掴んで押し返し、思わず声を荒げてしまう。

 態度を急変させた俺に、ヒメがビクリと身体を強張らせたのが分かった。


「お前はまだ、朧さんが好きなんだろ?」


 俺の問いには答えず、ヒメは俯く。


 どうして、今日に限ってヒメを拒めなかったんだろう。

 一度ヒメに触れてしまえば、多分、いや、絶対にまた触れたくなる。

 熱くて柔らかな唇の感触とか、切なく零れる吐息とか、何もかもが愛しさに繋がっていってしまう。
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