誘惑プリンセス【BL】
「メシの準備しておいたから、時間があるなら食べていってよ」

「何から何までほんと、すみません」

「そんなに謝らなくて良いよ。もうそろそろ飯が炊けるから、何か分からなければヒメに聞いて」


 お礼を言う陣くんに手を振って、短い廊下を歩く。

 玄関に置かれた靴の数に複雑な何かを感じつつ、自分のスニーカーを履いた時だ。


「──ヒメノ、大丈夫?」


 不意に聞こえてきた陣くんの声に、思わず振り返る。

 その後の会話は、殆ど聞こえてこなかったけれど。

 素直にヒメのことを心配出来るような気分じゃなかった。

 陣くんと律くんがいるんだから、俺が気にする事なんてない。


 玄関脇の棚から鍵を取った俺は、足早に部屋から出て行った。



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