誘惑プリンセス【BL】
 ばつの悪い表情を浮かべたヒメが部屋に戻ってきたのは、それから5分程経ってからだった。


「お前、体調悪いのか?」


 髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜながらベッドに座るヒメに、俺は温かいお茶を入れたマグカップを差し出す。

 ベッドの脇に腰を下ろして、自分の分のマグカップはテーブルに置いた。


「体調? 全然平気だけど」

「何が平気だ! さっき俺がどんだけ心配したと思ってんだよ!!」

「単に寝てただけじゃねーか」


 あれが、『単に寝てた』で済ませられるか!

 俺が何度呼んでも、どんなに身体揺すっても起きなかったじゃないか!


「……別に、どこも悪くねぇよ」

「本当だな?」

「じゃあ、俺とセックスしてくれたら本当の事言うってのは?」

「またそれかよ」


 軽々しくヒメの口から飛び出てくる台詞に、俺は肩を落とす。


 昨日から、ヒメは何か変だ。

 今までにも俺を誘うようなことを言ってきたり、してきたりはしていたけれど、ここまで露骨にされると何か別の意図があるように思えてしまう。

 何でそこまでして俺とセックスすることにこだわるんだろうか。


 セックスすることと、さっきのヒメの様子と、何か関係有るのか?
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