誘惑プリンセス【BL】
 ヒメが置いていったマグカップを片付けて隣の部屋に行こうとすると、丁度ヒメが外から戻ってきた。


「さっきの続き」


 俺と目が合うなり、ヒメはそう切り出した。


「続き?」

「何か言いかけてただろ?」

「ああ、あれ? もういいよ。それより、俺はもう寝るから」

「なんだよ。早くね?」

「全然早く無いから。もう1時になるんだし、ヒメと違って俺は昼間働いてるんだから、ちゃんと夜に寝たいんだよ」


 俺より少し背の低いヒメは、何か言いたそうに上目遣いを送ってきた。

 また長くなりそうだから、それには気付かないフリをする。

 ヒメの肩を押してベッドの前に連れて行き、その肩を軽く叩いた。


「ベッド、好きに使っていいよ」

「また座椅子で寝んのか?」

「違うよ。今まで意地になってベッドで寝てたけど、考えてみれば俺が布団使えばいいんだよな。ベッドはお前にやるよ」


 ──瞬間、ヒメが俺を睨んだように見えた。


 けれどすぐに、別の表情に変わっていった。
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