誘惑プリンセス【BL】
「確か、明日はバイト休みだったよな?」


 コンビニでのバイトを終えて帰るなり、ヒメは俺をわざわざ玄関まで出迎えてそう言ってきた。


「休みだけど、何?」

「出掛けようぜ」

「出掛ける? どこに?」

「そうだなー……アウトレット行きたい」


 アウトレットって、3駅向こうに新しく出来た新しいモールだよな?


「俺なんかじゃなくて、女友達とかと行ってこいよ」


 男2人でそんなとこ行くなんて、淋しいにもほどがある。

 それに、あんな所平日でも構わず混んでるだろ?

 折角の休みに疲れるようなことはしたくない。


「あのさ、今、めんどくさいとか思っただろ?」

「そうだよ。その通りです。悪いかよ」

「そんなことばっか言うからオッサン臭いんじゃん」


 そんなことを言われて反射的に、「明日、一緒に出掛ければいいんだろ」とかって返してしまった俺は案外単純かもしれない。

 先日言われた一言が、結構効いてるみたいだ。

 でも、たかがこんなことで嬉しそうな顔をするヒメを見てるのも悪くない。

 俺とヒメの休みが合うなんて初めてだし、たまにはイイかもな。

 俺の前を歩いて部屋へ向かうヒメが、不意にこっちへ振り返った。


「これって、デートだよな」


 デートって……。

 ニヤリと含みのありすぎる笑顔を浮かべるヒメに、俺はもう何も言えなかった。
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