誘惑プリンセス【BL】
「このベッド狭いじゃん」


 狭いシングルベッドで、背中合わせの状態で、ヒメがぽつりと言う。


「お前が居るからだろ。誰のために布団出してやったと思ってるんだよ。布団で寝ろ。それが嫌なら、部屋片付けてやるから勝手に買ってこいよ」

「自分用のベッドが欲しいんじゃねぇよ。俺、1人で寝れないからさ」

「ガキじゃあるまいし何言って……」

「嘘じゃねぇよ」


 誰か居ないと寝れない、って言いながら、ヒメが俺の背中に抱き着いてくる。

 あまつさえ、脚を絡ませてきやがった。


「別にさ、こーやってて良いなら要らないけど、恭介寝れないだろ?」


 ……分かってるならやるなよ。


「添い寝の相手が居ないときはどーするんだよ。寝ないのか?」

「……ヒミツ」


 言わないあたり、物凄く怪しい。

 小さい子みたいに、ぬいぐるみ、とか言ったら笑ってやろうと思ってたのにな。


「つーかさ、恭介は俺としたくねぇの?」

「……何をだよ」


 ヒメが何を言いたいのか、分からない訳じゃない。

 それでも俺は、敢えて聞き返した。


「セックス」

「うわっ!」


 言葉と同時に、ヒメの指が俺の背中をくすぐる。

 思わずベッドから飛び出した俺は、床にしりもちをついた。
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