誘惑プリンセス【BL】
「俺を揶揄ってんのか」

「何だよ、なんか文句あんのか? お前が出掛けんの渋ってたから、俺なりに気ィ遣ってやったのに」

「気遣い方間違ってるから……」


 何をどう気遣えば、女の子の格好して出掛ける、っていう思考になるんだ?


 ヒラヒラしたアシンメトリーの黒いカーディガン。

 胸元にフリルの付いた白いインナー。

 黒のショートパンツにシルバーのミュール。


 惜し気もなく曝された色白の生足が目に痛い。

 爪先から頭のてっぺんまで、かなり気合い入ってるのが見てとれる。

 髪型もメイクも服も、コンビニに来た時みたいにバッチリ女の子。


 コイツ、オカマバーで働いてんじゃないだろうな?

 そう思ってしまう程、ヒメの完成度は高い。

 呆れるどころか逆に感心してしまう。

 でもそう感じたことをヒメに気付かれたくなくて、俺は目を反らした。

 それに、目のやり場に困る。

 同じ男とはいえ、この脚のキレイさは卑怯だ。


「なんだよ。カワイイの一言くらい言えよなー」


 文句を言いながらもスルリと俺の腕に細い腕を絡ませてきたヒメは、俺を引っ張る様に歩き出す。

 ヒールの所為でいつもよりヒメの顔が近いのが気になるけど、気にしたら、負けだ。

 ヒメの思うツボ。

 腕に当たるのは柔らかな胸じゃないのに、フリルで誤魔化された薄っぺらい胸板にドキドキしてしまう自分が恨めしくなる。
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