誘惑プリンセス【BL】
「恭介っ!」


 名前を呼ばれて振り向けば、店の入り口で仁王立ちになっているヒメが俺を手招きしていた。

 仕方なく戻ればまた腕を引かれ、噎せるような芳香漂う店内に連れ込まれた。

 清潔感溢れる白い棚に並ぶ、色とりどりの容器。

 それらが何なのかさえ分からないまま横目に通りすぎると、レジカウンター前に出た。


「ミチル!」


 知り合いなのか、俺の腕を引いたまま、ヒメはレジの女の子に声を掛ける。


「あれっ、ヒメノくん!? ホントに来てくれたんだ。ありがとう! あ、もしかしてその人がヒメノくんの彼氏!?」

「ばーか。コイツが前に話した恭介だよ」

「なぁんだ、彼氏じゃないの?」

「男なんているワケねーだろ」

「絶対ウソだぁ。あたし、ヒメノくんに彼氏が居ても引かないよ? 恭介くんて彼女いないんでしょ?」

「えっ!?」


 別に、ぼうっとしていた訳じゃない。

 話し掛けられるなんてこれっぽっちも思ってなかった所為で、妙な声が出てしまった。

 けど、俺が何か言う前に腕を引かれて、ヒメが俺の前に出る格好になった。
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