誘惑プリンセス【BL】
「恭介、イタリアン好きだよな?」

「好きだけど……」


 パスタ……イタリアン……レストラン……。


 連鎖式に、思い出してしまった。

 就職のこと、早めにオーナーに返事しなきゃなんだよな。

 分かってはいても、中々答えが出せずにいた。


 俺って、こんなにも優柔不断だったかなぁ……。


「そんじゃ、決まり! 早く行こうぜ」


 にっこりと笑ったヒメは、俺の腕じゃなく、手を引いて歩き出した。


 何気なく絡められた指が。

 触れ合う掌が。

 その、温かさが。


 無駄にヒメの存在を誇張しているように感じられて。


 俺の手を引いて少し前を歩くヒメが、無性に愛しく感じられた。
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