誘惑プリンセス【BL】
「恭介……っ!」


 再び呼び掛けてくるサラリーマンに、見覚えなんてこれっぽっちも無くて。


「すみませんが、どちら様……」

「──おい、行くぞ」


 今度は、ヒメが俺を遮って腕を引いてくる。

 余りの力強さに足を縺れさせながらも、引かれるままに俺はヒメに着いて行くしかなかった。


「恭介、待ってくれ……!」


 待て、と言われても、ヒメは駐車場を走り出して、アウトレットの外へと続く階段を降り始めている。

 結局、あの人は誰なのか思い出せないまま、俺達は駅へと続く道に出てしまっていた。



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