誘惑プリンセス【BL】
「なぁ、ヒメ……」


 どうしても気になって、そっと呼び掛けてみる。


「……なんだよ」


 小さくても返事が返ってきたことに安堵した俺は、ドキドキしながらも言葉を続けた。


「お前、さ……実家には帰ってるのか?」

「なんで?」

「や……、お前のお兄さん、なんか、呼び方が必死だったから……気になって」

「そういう恭介は、実家に帰ってんのかよ」

「年末年始くらいはな」

「あ、そう」


 そっけない返事で会話終了かと思っていたら、ごそごそと背後でヒメが動きだした。

 寝返りを打って、俺の方を向いたらしい。

 温かな両手が背中に触れて、ヒメが身体を寄せてくるのが分かった。
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