誘惑プリンセス【BL】
「アイツに会ったのは、4年振りくらいかも。今更俺のことなんかで必死になって、バカみてぇ」

「そんな風に言うなよ。お兄さんなんだろ?」

「血が繋がってりゃどんなヤツでも兄弟って言えんのかよ」

「ヒメ……」


 顔が見えないだけにその本心までは読み取れないけど。

 どうやらヒメとお兄さんは仲が悪いみたいだ。


「そう悪く言うなって。俺は兄弟とかいないから、何だか羨ましく思うけど」

「……恭介が思ってる程、良いモンじゃねぇよ」


 俺のシャツを、ぎゅっと掴んだヒメは、もう寝るから、と呟いてそれ以上口を開くことはなかった。


 次第に、規則的な寝息が聞こえてきて、その吐息と温かな体温が、ヒメという存在を誇張しているように感じられた。

 無駄に鼓動が早まって。

 結局俺は、眠れない夜を過ごすハメになった。


#2 『ヒメ』と『恭介』 fin
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