誘惑プリンセス【BL】
「おかえり」
廊下に向かって声を投げ掛けると、突然バタバタと音がして慌てて扉を閉めるような音が聞こえた。
気になって顔を覗かせると、丁度ヒメが部屋から出てくるところだった。
「なぁ、朝メシ……」
目があった、と思った瞬間に反らされ、ヒメは洗面室に駆け込んだ。
程なくして、シャワーの音が聞こえてくる。
何やってんだ、アイツ……。
料理する手を止めて、俺は浴室の扉を叩いた。
「ヒメ、朝メシどうする?」
「いらない!」
ヒメからの言葉はそれしか返ってこなくて。
話し掛けるな、と言わんばかりにシャワーの音が響いていた。