誘惑プリンセス【BL】
 
「フラれたことあんなら、分かるだろ」


 不意に伸びてきた手に肩をぐっと引き寄せられたかと思うと、ヒメの柔らかな唇が俺のに触れていた。


「恭介には特別なことかも知れないけど、俺にはそう思えない。特別なキスって、何? したいからするんじゃダメ?」


 俺の額に自分の額を付けたまま、ヒメは小さく聞いてくる。


「……普通は、駄目だろ」


 至近距離で視線は合わさったまま。

 俺の心臓がヤケに激しく鼓動を繰り返す。


「俺とするキスって、特別?」

「少なくとも、俺には特べ……っ」


 言葉ごと口を塞がれて、俺が顔を引けば離れられるのに、そうすることが出来ない。

 積極的に動く唇の間から滑り込んできた舌が、触れて……。


『抱いて』


 以前ヒメに言われた言葉が、脳裏に蘇る。

 その言葉を、ヒメは……朔杜さんにも言った訳で。


「──……っ、悪ふざけならやめろっ」


 ギリギリの所で身を引いた俺は、不満そうに顔を歪めるヒメを睨み付けた。
 
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