誘惑プリンセス【BL】
「ケチ。キスくらいいーじゃん」
「駄目だ」
「なんだよ。ホントはしたいくせにさ」
その言葉に、俺は言い返せなかった。
本当は、ヒメとキスしたいって思ってる。
触れてしまったら、離れがたいことを知ってしまったから。
抱き締めあって、ゆっくりと、深く、触れることが出来たらどんなにいいか。
思いが通じ合ったら、どんなにいいか。
「──ヒメ」
立ち上がろうとしたヒメを呼び止めて、女の子みたいに華奢な手を捕まえる。
「なに?」
「好きだよ」
「……なんだよ、急に」
「俺、ヒメが好きだ」
「そんなこと知ってるし。つーか、もしかして本気の告白?」
「そう聞こえない?」
「さっき言ったじゃん。縛られたくない、って」
「でも、俺の気持ちは変わらないから」
「……俺だって、変わんねぇよ……変えらんねぇよ。そんな真面目な顔して好きとか、言うなよ。俺にはもう分かんねぇよ!」
俯いたヒメが、ぶっきらぼうに言葉を吐き出す。
その表情は、今にも泣き出しそうなほど歪んでいた。
そんな顔させる為に、気持ちを言葉にしたんじゃない。
ヒメを悩ませたり、苦しめる為に言ったんじゃない。