誘惑プリンセス【BL】
「俺はヒメのことを縛るつもりなんて無い。今まで通り、ヒメの好きなようにしてくれて構わないから」
「……恭介って、M?」
泣きそうだと思えば、今度は訝しげな視線を送ってくる。
コロコロ変わるヒメの態度に、こっちがついていけなくなりそうだ。
「そんなのどっちだって良いだろ。それより──」
「──でもいつか、俺に好きだって言ったこと後悔するに決まってる。どうなるか分かってんだから、曖昧なままでいいじゃん。恋人なんて言葉に強制力なんてねぇんだし。それとも恭介は俺を独り占めしたいとか思ってんの?」
「……思っちゃ駄目なのかよ」
「真面目なんだな、恭介」
少し笑ったような、少し呆れたような、何とも取りがたい表情でヒメは俺の手を解いた。
「遊び半分で付き合うのが一番ラクだと思わねぇ?」
「でも、朧さんとは……」
「アイツのことはもういい!」
途端に険しい表情で俺を睨んでくる。
何だかんだ言って、ヒメはまだ……朧さんのこと忘れられないんだ。
本気で、好きだったんだ。
それでもヒメなりに、忘れようとしているんだろう。
だからって、浮わついた事ばかりしていたら傷付くだけじゃないのか?
それを俺がどうにかしてやれる自信は、正直なところ、無い。
ヒメにとってどうすることが最善なのか分からない今、俺が本気で告白してもやっぱり無駄だったんだ。
けど、言ったことを後悔はしてない。
元々好きなのはバレていた訳だし、改めて言葉にしたことで、俺の気持ちが本物だっていうことをヒメもちゃんと分かった筈だ。