キラキラひかれ
『13年後のクレヨンしんちゃん』
僕はシロ、しんちゃんのともだち。
十三年前に拾われた、一匹の犬。
まっ白な僕は、
ふわふわのわたあめみたいだと言われて。
おいしそうだから、抱きしめられた。
あの日から、ずっといっしょ。
「行ってきマスの寿司~~~~~~。」
あいかわらずの言葉といっしょに、しんちゃんは家から飛び出していった。
まっ黒な上着をつかんだまま、口に食パンをおしこんでいるところを見ると、今日もちこくなんだろう。
どんなに大きな体になっても、声が低くなっても、
朝に弱いのは昔から。
特に今年は、
しんちゃんのお母さんいわく
『ジュケンセイ』
というやつだから、
さらにいそがしくなったらしい。
たしかに、ここのところのしんちゃんは、
あんまり僕にかまってくれなくなった。
しかたのないことだとしても、なんだかちょっと、うん。
さみしいかもしれない。
せめてこっちを見てくれないかな、
と言う気持ちと、
がんばれ、
という気持ち。
その二つがまぜこぜになって、
とにかく少しでも何かしたくなって。
小さくほえてみようとしたけれど、
出来なかった。
なんだかとても眠たい。
ちかごろ多くなったこの不思議な感覚、ゆっくりと力が抜けていくような。
あくびの出ないまどろみ。
閉じていく瞳の端っこに、
しんちゃんの黄色いスニーカーが映って。
ああ今日もおはようを言い損ねたと、
どこかで後悔した。
ぴたぴたとおでこを触られる感覚に、
急に目が覚める。
いっぱいに浮かんだ顔に、
おもわず引きぎみになった。
ひまわりちゃんだ。
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