キラキラひかれ

『13年後のクレヨンしんちゃん』



僕はシロ、しんちゃんのともだち。


十三年前に拾われた、一匹の犬。


まっ白な僕は、
ふわふわのわたあめみたいだと言われて。

おいしそうだから、抱きしめられた。


あの日から、ずっといっしょ。


「行ってきマスの寿司~~~~~~。」

あいかわらずの言葉といっしょに、しんちゃんは家から飛び出していった。


まっ黒な上着をつかんだまま、口に食パンをおしこんでいるところを見ると、今日もちこくなんだろう。


どんなに大きな体になっても、声が低くなっても、
朝に弱いのは昔から。


特に今年は、
しんちゃんのお母さんいわく
『ジュケンセイ』
というやつだから、
さらにいそがしくなったらしい。


たしかに、ここのところのしんちゃんは、
あんまり僕にかまってくれなくなった。


しかたのないことだとしても、なんだかちょっと、うん。
さみしいかもしれない。


せめてこっちを見てくれないかな、
と言う気持ちと、
がんばれ、
という気持ち。


その二つがまぜこぜになって、

とにかく少しでも何かしたくなって。
小さくほえてみようとしたけれど、
出来なかった。


なんだかとても眠たい。

ちかごろ多くなったこの不思議な感覚、ゆっくりと力が抜けていくような。

あくびの出ないまどろみ。


閉じていく瞳の端っこに、
しんちゃんの黄色いスニーカーが映って。


ああ今日もおはようを言い損ねたと、
どこかで後悔した。


ぴたぴたとおでこを触られる感覚に、
急に目が覚める。
いっぱいに浮かんだ顔に、
おもわず引きぎみになった。


ひまわりちゃんだ。


,
< 6 / 24 >

この作品をシェア

pagetop