新アニオタ王子
すかさず、香月さんにメール。
:ただのアニメオタク野郎でした。
因みに、メイド喫茶にてメール送信です。
ピピッ♪
:なら、良かった。じゃあ
頑張って。
いつもと変わらない
返事。
なら、良かったの意味さえ今のあたしには理解できない…。
トイレなら戻ってきたオタクがリュックからびっしり
文字を書いた一枚の紙を取り出した。
「…なにコレ?」
「僕のプロフィール。昨日徹夜で書いたんだ。
僕の親と会うまでに覚えてね」
汚い文字で手書きされた要らないプロフィール。
好きな物
アニメ。漫画。マホリン。
嫌いな物
高飛車な女。セーラーが似合わない女。
職業
WEBデザイナー。
職業はフィギュアの衣装作りでしょ?嘘書いてるんじゃないわよ。
とも、言いたくなる。
「こういうのは、できれば事前に渡して下さいね…」
「マユリン。今から僕の事マサ君って呼んでね
本番でミスとかされたら困るから。」
あたしの言葉は聞こえてないのかしら…。
ため息がこぼれる。
「はいはい。分かりました。」
適当に返事をしながら目汚しのプロフィールを眺める。
…本心としては…こんな客、支払ってもらった以上の金を返すから
今すぐ帰りたい。
でもそれは…店の規則違反。
深い溜息を我慢するのは
とてもしんどい事だと…
この短時間でよく学んだ…。
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夕方、マサ君…の両親が待つホテルのレストランに到着。
「マユリン、何度も言うけど失敗しないでよ?」
「なめないでよ…。あたしをなんだと思ってるの?」
「…賢くはなさそうな女性…。」
くっ…
本気で腹が立つ。
レストランの入口にいたボーイさんにオタクな名前を告げると、すぐに席に案内をしてもらう。
あたしはとりあえずマサ君の三歩後ろをついて行った。