新アニオタ王子
奥の窓際の席に座ってる中高年の夫婦が私達二人を見て笑顔を漏らす。
「ママ、パパ、紹介するよ
こちらが僕の恋人のマユさん」
マサ君の紹介に合わせてあたしは軽くお辞儀をし、挨拶をする。
「香月マユです。」
『香月』は名字を考えるのが面倒で勝手に香月さんから借りた。
マサ君のご両親は興味本位とでもいうようにあたしを上から下まで見ると、「どうぞ掛けて下さい」と冷たい声色で呟く。
ボーイさんがコース料理を運んでくれても
マサ君の母親は分かりやすいくらい
あたしに冷ややかな視線を向けている。
それとは正反対にあたしを見ながら頬を軽く赤くして
鼻の下をのばしている父親。
どっちも昔からよく目にしている光景だ…。
「マユさんはお仕事…何をなさっているの?」
「び…美容院だよ」
マサ君の思いつきで答えたことにあたしも頷く。
「あらそうなの…大変でしょう?」
「い、いえ…」
「私はまた、風俗の方かと
思いましたわ」
嫌味を一心に微笑む母親に、一瞬ギクッとしたけど
笑顔でスルーした。
「失礼な事言うもんじゃない。」
父親が慌てて良い舅アピールをするようにあたしの顔を覗きこむ。
それからもしばらく
マサ母の皮肉めいた質問は続いた。
料理を全て食べ終えてようやくマサ君が両親にきりだす。
「だから…僕、お見合いは
できないんだ。」と…
母親はしばらく黙り込んで
「とりあえず、お見合いの件は先方に頼んで延期に
してもらいましょ。」
と笑った。
延期。
その言葉に肩を落としたマサ君とあたしは言葉なく、先にレストランを出た。