新アニオタ王子
「延期だって、残念だね」
「…うん」
「でもマサ君みたいな奴は
結婚できる時にした方がいんじゃない?」
軽い調子で言ったあたしに
拗ねたような声を返す。
「それ、どういう意味?」
「…別に、深い意味は
ないけど?」
どこに向かって歩いてるのか分からないけど
しばらくあてもなく歩いた。
「契約は明日の昼まで
だけど…
これからどうするの?」
歩き続けるには
ヒールの高いこの靴じゃ
辛い。
暫く待っても返事を返さないマサ君に今度は強めに尋ねる。
「ねえってば⁈」
「あのさ、マユちゃん…僕の事はもうマサ君って呼ばなくていいよ」
…それもそうだよね。
「それより、あたひ、足が が痛いんだよね…?」
「そう…じゃあ
ここでお別れしようか。」
「えっ?
でも…まだ契約時間は…
」
「いいんだ。
最初から親に会ってもらう事が、僕の君を買った理由だから。」
肩を落としながらそう告げる…
…それなら。帰ろうかな。
…。
だけどこんな辛気臭い別れ方
…なんだか嫌。
こんなキモい奴ホントなら
隣だって歩きたくない…はずなのに
なんでかあたしが缶コーヒーをおごって
公園のベンチに並んで座ってしまった。
親との話し合いがうまくいかなかったのを…
少し自分の責任もあるのかな、なんて勝手に考えたけど…。
でも、強制的にあたしを連れていったのはこのオタク。
それでも…ちょっと責任感じちゃう。