新アニオタ王子
あたしの心は曇り模様
気持ちは晴れないけれど、業務終了の連絡をするために携帯を取り出すと同時に香月さんの携帯から着信がきた。
『今、岡本様から連絡があったよ』
「えっ?なんて?」
『予定よりも早く別れましたが、トラブルでは無いので誤解しないように
って』
おせっかいで律儀なオタクだわ…。
だけどいい奴なんだろうね…
キモいけど。
『そういう事だから終了報告はいらないよ。』
そう言って電話を切ろうとした香月さんを止めた。
「待ってまだ…切らないで?」
『どうした?』
「今日、会いたいな…。」
会いたいって言葉は二人だけの秘密の合言葉だ。
それはあたし達が店以外の場所でプライベートで会うという事を指している。
『…行けるの夜中になりそうだけど?』
「それでもいいから。」
いつもだったら遅くなるなら断るけど…
今日はなんだかあのオタクと最後に交わした言葉が…
胸に残っててシュールな気分。
なんだか一人でいたくない。
「でも、胸ん中あっためてくれんのはその生きてる人間だけなんじゃない?」
振り返ると自分で言った言葉とは思えない。
愛し合う事も
他人の心の事なんて考える気さえ起こさないあたしが
言った言葉。
そのままあたし自身の心を突き刺した。
なんだか胸に針が刺さったみたいにチクチク。
痛いんだ…。