新アニオタ王子


気が付くと

昨日来たメイド喫茶の前。

店内に通じる階段を上って行くあいつの後ろ姿を確認。

やっぱりあいつに間違いは無いっ‼


階段を駆け上り

自動ドアが開くと

「いらっしゃいませ
ごお嬢様」

と可愛い声。

メイドは

あたしの姿を見て

驚いた顔をした。

そしてその表情を見たあたしはやっと冷静になった。



穴があれば入りたいくらいの

恥ずかしさ。

急に熱くなる体。

ウィーン。

自動ドアが閉まり

メイドの姿が消えた。

ウィーン

またもや開いた自動ドアの前にやっぱり立っているメイド。


もはや

行き場を無くした可哀相なあたし。

腹を据えてメイドに小さな声で「岡本正寿」と呟くと


可愛い声のメイドが

「岡本様なら少し前に帰られましたよ?」と愛想良く笑う。


「嘘っ?!だってあたし今…」

そう言い

店内をよく眺めると似た様な格好をしたキモい男達が揃いも揃ってあたしを見てる。

まるで

岡本正寿を探せ。みたいな
ゲームでもできそうなくらい。


さっきのキモい男はあいつじゃなかったんだ。


あたし…なんのために

メイド喫茶なんて…。


逃げる様に

あの場所を飛び出したあたしは、近くのファーストフードの店に寄り

ハンバーガーをお持ち帰り用にしてもらっている。

「お待たせしました。」

店員の男が

ハンバーガーの入った紙袋を渡す際、あからさまにあたしの手を握り上目使いをする。

ハハッ。

どんなトコでも

あたしを意識しない男なんていないんだよね。

そんなあたしが

あんなオタク野郎を追いかけ回して…

なんていう屈辱…。

恥までかいて…。



もう二度とメイド喫茶なんか行くもんかっっ‼

あいつと関わるのも考えるのもこれで終わりっ‼

さよならあたしの奇妙な二日間。

< 38 / 100 >

この作品をシェア

pagetop