新アニオタ王子
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夕方、岡本の車に乗って着いた先は高級住宅街に立ち並ぶ中の一軒家。
「あんたの実家って金持ちなんだ。」
「…どうだろ。普通じゃない?」
こんなセレブな高級住宅街に一軒家を建てられるくらいだ。
普通なわけ無い。
「…あんたって一人っ子?」
「そうだけど?」
他人の事をとやかく言える立場じゃないけど…
甘やかされた末の果てっていうのはこういう奴の事を言うんだと一人で頷く。
「ただいま」
岡本の後についてあたしも
家の中にお邪魔する。
「お邪魔します…」
あたし達の声を聞いて駆け付けたオタクの母親。
あたしの顔みるなりふてぶてしい笑顔を向ける。
「あらマユさんお久しぶりです。」
「ご無沙汰しております。」
一列に廊下を歩き右手の扉を開けると20畳ほどありそうなリビング。
すでにたくさんの料理が用意され
その料理を引き立てるように、花びらの形をしたガラスのシャンデリアがキラキラと優しい灯りを照らす。
あたし達が席に付くと岡本の父親もリビングにやって来て…食事をしながら楽しい会話…ともいかなく。
オタクの母親の厳しい一言、一言にキレそうになる
あたし…。
「まさか本当にまだお付き合いしてるなんて…
マユさんみたいな綺麗な方がうちの息子とこうして付き合ってるなんて…
何か裏でもありそうよね
うふふ。」
何がうふふ。だ、このばばあ。
好きで恋人やってるんじゃないわよ。
お金貰ってるからに決まってるじゃないっ…。
「そういえば、そのマユさんが身につけてらっしゃる腕時計…
ブランド物よね?
まさかとは思うけどうちの息子が?」
オタクの母親の何気無い一言にあたしとオタクは顔を見合わせる。
「違いますよこれは私が働いてる自分自身へのご褒美に自分で買った物です。」
「そうだよママ、僕はその女性に見合った物しかプレゼントしないから」
しれっと言いのけたオタクを軽く睨みつける。
ふざけんなよこのデブオタク…。
すると、オタクの母親。
一人息子への過剰なまでの歪んだ賛同。
「まぁ、それでこそママの息子よ。
しっかりやってるみたいでママ、安心したわ」
苦笑いしか浮かばない…。
何が安心なのよ…。
風俗店からあたしを買うようなこんなデブオタクがしっかり者なら
世の中はシッカリした男で溢れかえってるだろうに…。
自分の息子のこの身なりを
濁り切ったその目を洗浄してよく見てみれって気分だわ…。