新アニオタ王子
気づかないうちにいきなり、ぬぅっとデカい奴の顔が近付いてくる。
うわっ‼
驚きながらも、ちらちらっと交互に奴の顔と
母親の顔を見ると…
奴の母親は可笑しそうに含み笑いをしている。
キスなんかできるわけないと思ってるんだ…
その顔を見てカチンときたあたし。
覚悟を決めた。
ちゅっ‼
本当に 一瞬
触れただけの
軽いキス。
がっ‼
ん!?
なに!?
この匂い…
これは
…
キッチン横の生ゴミバケツのようなキツイ臭いっ‼
一瞬しか触れてないはずの
奴の口からありえない匂いがした。
くさっ!!
「まあ、ステキ」
満足そうな奴の両親。
それとは裏腹に
あの臭いであたしの体調はどんどん悪化していくというのに、追い詰めるかのような言葉。
「結婚は!?」
奴の母親の言葉に
勿論、絶句。
この親は…あたしを殺そうとしているのか…
「ママっ、マユちゃんはまだ若いから…すぐに結婚は…」
「でも、あなたのほうがね…もうそろそろいい年齢よね」
溺愛する息子の心配ばかり…
もしかしたらあたしは、こいつら家族に殺されかねない…。
そう考えた途端の眩暈に、俯くと
「マユさんどうしたの?
顔色が悪いわ」と、一応、初めて心配した素振りを見せる母親…。
「いえ…大丈夫です」
結局、奴の口臭のせいで
体調が悪くなったあたし。
岡本を連れて家をることになった。
車の中流れる景色の中にコンビニを見つけたあたしは
車を停めてもらいガムを買って奴に渡す。