新アニオタ王子
貴方までの距離



家に帰ると真っ先に冷蔵庫からビールを取り出し

気付けば酔いに任せてそのまま眠ってしまい朝の光りで目が覚めた。


ズキズキすると痛い頭をおさえながらバッグから手帳を取り出し今日の仕事の時間を確認する。

「お昼からか…」

歯磨きだけではまだ、残ったままのアルコールの臭いをブレスケアして

恋人クラブに向かったあたしには一つの決断があった。


コンコン。

事務所のドアをノックすると


「どうぞ」

香月さんの声。


「マユおはよう。」

「おはようございます」

「3番の部屋空いてるから」

「あの…」

「どうした?」

「話しが…あるんですけど」

「深刻な顔をしてどうしたんだ?」



「あたし仕事辞めます。」

突然の退職願に香月さんは眉を寄せた。


「どうした?」

「あたし…他にやりたい事見つけた…」

仕事を辞めようとは考えたものの

言い訳がなくて当たり障りなさそうな事を言ってみた。


そんなあたしを見てため息をついた香月さん。

「演技はもっとうまくやらなきゃな。」

「えっ?」


「他にやりたい事なんて嘘だろ?」

さすがするどい香月さん

「何があった?」

この仕事のせいで岡本の恋愛対象にならなかったのが悔しかった。

「好きな人ができたら…この仕事の事…言えないし。」

「好きな人ができたらじゃなくてできたんだろ?」

やっぱり香月さんは、なんでもお見通しなのかな…?

「うん…きっと、あたしあいつが好き。

だけどあいつに言われたから辞めたいんじゃ
なくて…

自分で辞めたいって思った…」

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