新アニオタ王子


「それなら辞めないでくれなんて言えないけど、今すぐ辞めるって事はできないのは分かってるよな?」

「はい。」

「残り二ヶ月先までの
予約を、No.1らしくちゃんとこなせよ?」

「はい。」

「ったく、マユがいなくなったら経営に響くだろ。でも…

良かったな?」

「えっ?」

「仕事を辞めたいと思わせてくれる様な奴と出会えて。」

あたしは返事の代わりに苦笑いを返した。


だけどね

香月さん

あたしはあいつを追いかけるなんてマネはするつもり無いんだ。


昔の女とキャラクターの女の尻ばかり追いかけるあんなオタク野郎はあたしは要らない。

あたしは

そんなダサイ闘いなんかしない。


なのに

そう決めたあたしに訪れたのは以前と違う生活だった。

あれから岡本に会いに行くのをやめた途端、自由が大好きなあたしなのに、この自分の部屋にいることさえ淋しいと感じるようになった。


おかしいよね

たかがオタク野郎と縁を切っただけのはずなのに…

あたしの満ち足りてたはずの時間が今はただ…

虚しいだけだ。


残り二ヶ月の仕事をNo.1らしくこなしていくつもりだったのに仕事に身が入らないのはどうしてかな…?


このまま仕事も辞めてあたしに残る物なんてあるのかな…。

気づけばそんな事さえ考えていた。新しい仕事を探す気もおきないまま

満たされない毎日を送ってるあたしを見たら…

岡本はそんな自信のないあたしを見てどう思うのかな…



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