エレファント ロマンス
忙しい仕事を切り上げ、定時で退社してくるお父さんのケータイは帰宅後も鳴りっぱなし。
「はい。前園です」
お味噌汁をお椀に注ぎながら、またケータイの着信に答えている。
「ですからね、山田さん。それは嫌がらせとかじゃないんですよ。それぞれのチームリーダーさんはあなたの成績を少しでも上げるために、色々アドバイスをしてるだけなんです」
お父さんは生命保険会社の営業課の係長。
いわゆる生保レディーを束ね、成績を管理する仕事だ。
「いやいや、そうじゃなくて。え? 辞める? ちょ、ちょっと、待って下さいよ」
電話で女性外交員をなだめすかしている。
電話を切った後は溜め息をつき、うかない顔。
とても、私が抱えている悩みを打ち明けられるタイミングではない。
「いただきます」
「あ、うん。先に食べなさい」
今度は別の人に電話をかけるお父さんの顔を、食事しながら盗み見る。
とても若い。
私と十歳しか違わないお父さん。
そう。
私とお父さんは血がつながっていない。
「はい。前園です」
お味噌汁をお椀に注ぎながら、またケータイの着信に答えている。
「ですからね、山田さん。それは嫌がらせとかじゃないんですよ。それぞれのチームリーダーさんはあなたの成績を少しでも上げるために、色々アドバイスをしてるだけなんです」
お父さんは生命保険会社の営業課の係長。
いわゆる生保レディーを束ね、成績を管理する仕事だ。
「いやいや、そうじゃなくて。え? 辞める? ちょ、ちょっと、待って下さいよ」
電話で女性外交員をなだめすかしている。
電話を切った後は溜め息をつき、うかない顔。
とても、私が抱えている悩みを打ち明けられるタイミングではない。
「いただきます」
「あ、うん。先に食べなさい」
今度は別の人に電話をかけるお父さんの顔を、食事しながら盗み見る。
とても若い。
私と十歳しか違わないお父さん。
そう。
私とお父さんは血がつながっていない。