エレファント ロマンス
4.
Puma concolor 【ピューマ】
「ただいま……」
小さい声で言い、玄関に知らない靴がないことを確かめてから家に入った。
「ただいまー」
今度は普通に言う。
「おかえり」
お父さんの声。
私は大きく息を吸い込み、台所にいるお父さんを見ないようにして一気にしゃべった。
「ゴハン、いらない。友だちと食べて来ちゃった、ごめんね」
秘密で張り裂けそうな胸を抱えたまま、お父さんの向かいに座ってゴハンを食べる勇気がない。
私は足早に2階へ上がった。
「は―――……っ」
溜め息をつき、制服のままベッドに転がった。
―――明日、鳴沢先生の部屋に行かなきゃならない……。
先生はクラスメイトたちにとって憧れの存在。
いっぱいボーイフレンドがいる明奈でさえ、鳴沢先生が好きだと言う。
いいじゃん。
そんな学園アイドルみたいな鳴沢先生が、私に興味があるって言ってくれてるんだから。
何とか自分をだまそうとしてみた。
けれど、どう考えても、私にとっての担任は『恐怖』以外の何者でもない。
私から無理やりファーストキスを奪った卑劣な人間。
思い出すだけで悔し涙がわきあがってくる。
小さい声で言い、玄関に知らない靴がないことを確かめてから家に入った。
「ただいまー」
今度は普通に言う。
「おかえり」
お父さんの声。
私は大きく息を吸い込み、台所にいるお父さんを見ないようにして一気にしゃべった。
「ゴハン、いらない。友だちと食べて来ちゃった、ごめんね」
秘密で張り裂けそうな胸を抱えたまま、お父さんの向かいに座ってゴハンを食べる勇気がない。
私は足早に2階へ上がった。
「は―――……っ」
溜め息をつき、制服のままベッドに転がった。
―――明日、鳴沢先生の部屋に行かなきゃならない……。
先生はクラスメイトたちにとって憧れの存在。
いっぱいボーイフレンドがいる明奈でさえ、鳴沢先生が好きだと言う。
いいじゃん。
そんな学園アイドルみたいな鳴沢先生が、私に興味があるって言ってくれてるんだから。
何とか自分をだまそうとしてみた。
けれど、どう考えても、私にとっての担任は『恐怖』以外の何者でもない。
私から無理やりファーストキスを奪った卑劣な人間。
思い出すだけで悔し涙がわきあがってくる。