エレファント ロマンス
私は桜井透真のどこか寂しげな横顔に、こわごわ声をかけた。


「き、昨日は……ありがとう……」


すると、透真は私を一瞥し、またすぐにピューマの方へ視線を戻した。


返事ぐらいしてよ。


そう言いたくなるのをグッとおさえ、私は彼の隣りに座った。


「あ、あのさぁ……。なんて言うか……」


「なんだよ」


面倒くさそうな返事。


「つまり……。ゾウのこと嫌いなのに、なんで飼育係りやってるの?」


昨日の記事を読んで透真に同情しているはずなのに、なぜかぶっきらぼうにしかしゃべれない。


「おまえには関係ないだろ」


相手もツンツンとんがっている。


しかも、昨日まで『あんた』って呼ばれていたのに、今日は『おまえ』よばわり。


確か、最初は『ミツアミ』って呼ばれた。


どっかの政治家みたいに、発言ブレてるぞ、桜井透真。

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