エレファント ロマンス
私はカバンからノートを出して、そこに名前を書き、ちぎって透真の前に差し出した。


「私、前園由衣。これからは名前で呼んでくれない? そしたら、桜井さんのこと陥れた女の子とは別の子だって認識できるんじゃない?」


透真は目の前の紙切れをチラリと見えて、大きな溜め息をついた。


「前園由衣。おまえ、記憶力、ゼロだな」


「はい?」


「俺に見えないところでじっとしてろって言ったろ」


そう言い放ち、彼はベンチから立ち上がった。


「そんなこと言われても、どうしても気になるんだもん、桜井さんのこと」


「え?」


驚いたように振り返った透真を見て、ハッとした。


これじゃ、まるで私が透真に気があるみたいな空気じゃん。


わけもなく焦った。



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