エレファント ロマンス
『桜井さんも、涼宮沙羅さんのこと、好きだった?』


聞きたい……。


でも聞くのが怖い……。


きっと好きだった分だけ、彼女を憎んでるだろうから。


他の男の人を守るために透真を陥れた女の子に似てるなんて最低だ。


透真がその女の子を好きだったとしたら、もっと悲惨。


私の顔を見るのもイヤだろう。


それが悲しい。


―――私、桜井さんに嫌われたくない。


そのとき初めて、自分の気持ちに気づいた気がした。


「そんな深刻な顔すんなよ、前園由衣」


「え?」


「悩んだところで、解決法は二つしかない。鳴沢と戦うか、俺みたいに逃げるか、だ」


自分を卑下するような顔で、ピントはずれなアドバイス。


―――今、深刻な顔してる理由はそっちじゃないんですけど……。


「桜井さんだって戦ってるじゃん」


そう言うと彼は苦笑した。


「仕方なくね。研究所の職員は、ここからしか採用されないから仕方ない」


―――そんなに北陸の研究所に行きたいんだ……。


それも切なかった。


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