マヨイガの街
あれは、
懐かしい日の、村の祭りの提灯の火だ。
幼い私と佐久太郎は、手を繋いで歩いている。
村の神社の境内で、
祭りの人混みからそっと離れて、
ご神木の下で佐久太郎は、私にこの桜貝でできた小さな根付を差し出した。
そうして、
「お鈴」と、彼は祭りの明かりに照らされた頬をぽっと赤く染めて私の名を呼んで、言ったのだ。
大きくなったら夫婦(めのと)になろうと。
己のもとに嫁に来てほしいと。
私もまたぽっと、提灯のようにほっぺたに火が灯るのを感じながら頷いた。
約束すると。
私は大きくなったら、佐久太郎のお嫁さんになると。
「これはそのあかしだ」と言って、佐久太郎は己も、
自らが作ったという、そろいの桜貝の根付を揺らして見せて、
その二つの根付を、私たちは幼き日の約束の証として、互いに一つずつ持ったのだった。
懐かしい日の、村の祭りの提灯の火だ。
幼い私と佐久太郎は、手を繋いで歩いている。
村の神社の境内で、
祭りの人混みからそっと離れて、
ご神木の下で佐久太郎は、私にこの桜貝でできた小さな根付を差し出した。
そうして、
「お鈴」と、彼は祭りの明かりに照らされた頬をぽっと赤く染めて私の名を呼んで、言ったのだ。
大きくなったら夫婦(めのと)になろうと。
己のもとに嫁に来てほしいと。
私もまたぽっと、提灯のようにほっぺたに火が灯るのを感じながら頷いた。
約束すると。
私は大きくなったら、佐久太郎のお嫁さんになると。
「これはそのあかしだ」と言って、佐久太郎は己も、
自らが作ったという、そろいの桜貝の根付を揺らして見せて、
その二つの根付を、私たちは幼き日の約束の証として、互いに一つずつ持ったのだった。