マヨイガの街
幼なじみ同士で交わし合った、私たちの約束のただ一つの証を、

佐久太郎がいなくなってからも十年間、私が大切に持ち続けたその桜貝の片割れを、


天狗の朔太郎は食い入るように見つめて──


無言のまま、
懐から、小さな布袋を取り出した。


袋の中から天狗の若者が取り出したものを見て、

私は大きく息を呑んだ。



「それは──」



桜貝の根付だった。


私のものと、うり二つの。
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