マヨイガの街
「鈴!」

後ろから天狗の叫び声が聞こえて、

「おのれ、小娘! よくも邪魔を──!!」

恐ろしい形相で烏天狗が手にした刀を、私に向けてもう一度振り下ろした。


しかしその刃が潜り込んだのは私の体ではなく──


「朔……様……!?」


今度は私を守ろうと身を盾にした朔太郎が、背に一撃を受ける。

人のものと同じ──
私のものと同じ──真っ赤な鮮血が繁吹いた。

彼は美しい口元から、苦鳴を漏らし、

力を失った私の体を抱き留めて、金の瞳で烏天狗を睨みつけた。


疾風が起き、烏天狗の体が吹き飛び大地に叩きつけられて、


続けて朔太郎が抜いて投げ放った刀が、

烏天狗夜小丸の体の真ん中を指し貫き、大地に縫い留めた。
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