マヨイガの街
「うそ……です」
震える唇で繰り返す鈴華の頬は、硬く強ばっていた。
「嘘ではない」
俺も硬い表情で繰り返した。
「うそです、うそです……! では、佐久太郎は──佐久太郎は──」
「十年も前に、この山で鈴たちとはぐれて間もなく、命を失ったのだ」
「そんな……」
たった一つの心の支えを失って、
鈴華の愛らしい瞳を見る間に絶望の色が染め上げてゆくのがわかった。
「それが、鈴の知りたがった佐久太郎の真実だ」
こういう時に、人は優しい嘘を吐いてやるものなのかもしれぬが。
しかし俺は天狗であるので、……
「すまない……」
山で死んだ者の真実を、誠意をもって伝えなければ。
「すまない、鈴」
死者の真実を知りたがる者に、嘘偽り無く答えなければ。
「俺を許してくれ」
たとえそれが、救い一つない
こんな真実だったとしても。
こんな──
「こんな真実など、知ればつまらぬものだろう。
こんな話を、お前に聞かせてどうなるというのか。
生き別れた幼なじみを演じてやれば良かったな」
気づけば俺は、天狗の矜持も何もかも忘れて、腕の中の娘に謝罪していた。
震える唇で繰り返す鈴華の頬は、硬く強ばっていた。
「嘘ではない」
俺も硬い表情で繰り返した。
「うそです、うそです……! では、佐久太郎は──佐久太郎は──」
「十年も前に、この山で鈴たちとはぐれて間もなく、命を失ったのだ」
「そんな……」
たった一つの心の支えを失って、
鈴華の愛らしい瞳を見る間に絶望の色が染め上げてゆくのがわかった。
「それが、鈴の知りたがった佐久太郎の真実だ」
こういう時に、人は優しい嘘を吐いてやるものなのかもしれぬが。
しかし俺は天狗であるので、……
「すまない……」
山で死んだ者の真実を、誠意をもって伝えなければ。
「すまない、鈴」
死者の真実を知りたがる者に、嘘偽り無く答えなければ。
「俺を許してくれ」
たとえそれが、救い一つない
こんな真実だったとしても。
こんな──
「こんな真実など、知ればつまらぬものだろう。
こんな話を、お前に聞かせてどうなるというのか。
生き別れた幼なじみを演じてやれば良かったな」
気づけば俺は、天狗の矜持も何もかも忘れて、腕の中の娘に謝罪していた。