マヨイガの街
二千年後──!?

私はその悠久の響きに、大きく目を瞬いた。

「朔太郎様、それはあまりに平たく申しすぎです」

聞いていた烏天狗の影時が、横から口を──くちばしをはさんだ。

私はその鳥とも人間ともつかぬ容姿の生き物を眺めた。

「……二千年後には、人間はこのような姿になるものなのでしょうか」

「うむ、まあそうだ」

「朔太郎様!」

ぼう然とする私の前で、影時が朔太郎に文句を言った。

「では……では……」

私はなんとか朔太郎の言葉の意味を捉えようとして、


「朔様や影時……様は──天狗というものは──二千年後の先の世から、この慶応の世に現れた人間ということなのですね?」


もつれた頭を必死に整理しながらそう口にした。


何故か、朔太郎と影時が顔を見合わせた。


「ほら見なさい」と影時が朔太郎を金色のまん丸な目玉で睨んだ。

「朔太郎様が平たく言い過ぎるから、未来人だなどと彼女が勘違いをするのですよ」


勘違い?

二千年後の人間が、今私の目の前にいるというのは──そういうことではないのだろうか。


「鈴、我々は未来からこの時代に来た未来人などではない」

朔太郎は私の考えを否定して、「そもそも時間軸の過去への移動は、我々の技術を持ってしても成し遂げられていない」などと呟き、


「もう一度尋ねるが……鈴よ、今は何年の何月何日だ?」


と、私に訊いた。
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