携帯小説的恋
俺は身を乗り出して順のハンドルを奪った。

「ほら、順、こんな風に、ジグザグやらなきゃ、面白くねぇだろ?」

必然的に、俺は順の前に被さる格好で、

ハンドルを握る手に力が入る。

でもって、

背中に順の吐息を感じて、徐々に身体が熱くなる。

「月人君、ちゃんと前見て、ぶつかるよぉ~」

順が焦って、アクセルから脚を離した。

情けなく推進力を失って、カートが止まった。

「何やってんだよ、順!」

振り向くと、順が真っ赤な顔で固まっていた。

「ワリィ、つい調子に乗っちまった」

頭をポリポリ掻きながら、誤魔化した。

そんな顔すんなよ、

俺まで恥ずかしくなるじゃねぇか……
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