携帯小説的恋
月人君が、手を取られてカップから降りた。

ふら付く足元、虚ろな瞳。

「ち、ちょと休めば、大丈夫です」

力なく答えたその声を合図に、あたしは、一人、立ち上がった。

「なによ、弱虫。このくらいで目回すなんて……」

「お客さん、外側に重心かければかけるほど、目が回るんですよ。

彼女みたいに、回転ハンドル近くにいれば大丈夫なんです」

月人君は係員に支えられ、やっと歩き出す。

「そんなことも知らないなんて、最低!」

あたしはそう吐き捨てると、出口目指して駆け出した。

「あ、お客さん、走らないで下さい!」

係員の制止を振り切って走り続ける。

もう、

デートレポートなんて、

どうでもいい……

溢れる涙で、あたしの行く手は霞んでいった。
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