携帯小説的恋
「山田君、あたし何が何だかわかんないよ」

眉間に皺寄せて、ヤンキー山田こと山田明人が、沙耶の耳元で囁いた。

「二人の時は、明人って呼んでくれなきゃいけませんよ」

「でも……」

「呼べって、言ってんだろぉ……」

小さく唸る、ヤンキー。


(なぁんだ、やっぱりヤンキー山田だ)


沙耶はホッと安心して、ヤンキー山田の肩に自分の頭をあずけた。

「あたしは意地悪なヤンキー山田も大好きだよ!」

驚いてビクッと震えたヤンキー山田、こと明人。

「え、あ、そうなのか?」

俺様山田の間抜けなつぶやきが聞こえた。

「でも、優しい明人君も魅力的だけどね」

「そ、そうだろ? ほら、俺の本質は迷える子羊ちゃんだからな」

揺れる金髪、微かに香るタバコの匂い。

俺様で、不良で、

時々突拍子もない大嫌いヤンキー、

山田明人。

やっぱり、あたしは、あなたに首ったけみたいです!


<Fin>

あたしは遊園地から戻ったその夜、『大嫌いヤンキー』を書き上げた。
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