携帯小説的恋
時々地図を見ながら、お喋りに花を咲かせ、随分とのんびり歩いていたのかもしれない。

「遅いぞ、順!」

声の方に顔を向けると、

グランド受付の門のところに、眉間に皺寄せた月人君が立っていた。

「友達と一緒に行くって、メールしたでしょ。待ってなくても良かったのに」

あたしが走り寄ると、月人君があたしの頭に手を置いて、

「このグランドは企業の構内グランドなんだから、勝手に入る訳にはいかねぇんだよ。

それに見学するなら、マノさんに紹介しないとな」

落ち着いた声でそう言った。

「あ、そっか。ごめん」

「ほら、行くぞ!」

月人君はあたしの手を取り、歩いて行こうとする。

「あ、あの、待ってよ。あたしの友達。それに、ほら、星野さんも……」

「勝手に付いてくんだろ……」

月人君は振り向きもせず、ドンドンと進んで行く。

「俺も着替えなきゃなんねぇんだ。急ぐぞ」

クラブハウスの横をぬけ、グランドを一つ通り越す。

「ここじゃないの?」

「練習は、奥のサブグランドでやるんだ」

開け放たれた、門をくぐると、そこには真緑の人工芝が広がっていた。
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