携帯小説的恋
先輩!

俺、ここにいるんすけど?

目に入ってますかぁ?

目の前のマノさんも真っ赤だけど、俺だってきっと真っ赤だ。

その時、俺の存在を思い出したかのように、マノさんが俺を見た。

うっとりとしたマノさんの顔が、いつものしっかり者の顔に戻っていく。

マノさんは、先輩が廻した腕を振り払いながら、

「グランドでは、あたしはみんなのマノさんですから」

毅然としてそう言った。

「ハイ、ハイ。分かりましたよ、マノさん」

先輩はあっさり引き下がると、グランドの子供達の方へと歩いていった。

「マノさん、いいんですか?」

「いいのよ。あたしを三週間もほっぽっといて、少しは反省するといいんだわ」

そう呟いたマノさんは、頬を薄っすらと赤く染め、艶をもったように美しかったけど。

いやぁ、なんとも居心地の悪い、

純情月人、

板挟みのこと。
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