携帯小説的恋
――若いっていいわねぇ~

あたしもあと五歳若けりゃ一緒に行くんだけどぉ~

そう言いながらも、マノさんは帰り支度に手と身体を動かしていた。

俺は混乱しながらも、練習用のボールを回収し、水分補給用のジャグを片付け、車に積み込んだ。

「じゃ、あたしはこれで」

そう言って車に乗り込むマノさんに、俺は答えを求めて視線を向けた。

「マノさん……」

俺はババ抜きのジョーカーを引き当てた子供の気分だ。

「月人君、なに情けない顔してんのよ。

君はね、ちょっとばかり自分の気持ちに鈍感過ぎるのよ。

特に恋愛に関してはね。

そういうとこ、あたしに似てる。

でもね、気付かないうちに過ぎ去ってしまう恋もある。

それって勿体ないでしょ。

あたって砕けろ。男でしょ!」

――自分の気持ちね……

い、いや……俺って、実は、みんなにいじって遊ばれてる?
< 93 / 205 >

この作品をシェア

pagetop