【妖短】 カ ミ カ ク シ
真実‐最期ノ裁キ‐
からん・・・・・・
からん・・・・・・
単調な下駄の足音が響く。
すっ・・・ずっ・・・・・・
きぬ擦れの音もいつの間にか聞こえた。
ずるずるとはいずっていた男はのろのろと顔を上げる。
視界に入ったのは、黒い着物に髪、真っ赤な帯の上には丸い膨らみ。
死を連想しそうな色に身を包んだ女。
男は息をするのも忘れるほど、見とれていた。
つぃ・・・・・・と女が下の男に視線を向ける。
男は息を呑む。
深紅の紅に深紫の瞳。
男は神だと思った。
女がついと口端を上げる。
すぅ・・・と腕を伸ばし、男の襟首を掴むとそのまま外にほおうった。
じりぃ・・・・・・と、音がしたと思ったら男は炎の中にいた。
あぁ・・・死ぬのか。
漠然と、そう考えていた。
自らが焼かれる中で女のどこに自分を投げる腕力があったのかと、今更ながら考えていた。
男の命はもう無かった。
衰弱した躯。生きたくて今回の犯行に手を出した筈なのに、今では死ぬ事を受け入れている。
〝俺は・・・死にたかったのか・・・・・・〟
最期に自嘲気味の笑いを浮かべ、男は炎が舞う中で焼かれて逝った。