愛し君へ…


俺は響のお墓に背を向け、海の方へ向かって歩き出した。


響が入院する前、2人でこの海に来た。

その時に約束した。
『また、夏になったら来よう』って。



響はきっと、あの時自分の運命に気付いていたはずだ。

だとしたら、『夏になったら』っていう約束は…





「俺が、ちゃんとここに来れるように…か」





本当に最後まで、人のことしか考えてないんだな。


響はあの日、俺にお願いがあると言った。

『次は、海が見えるキレイなところに住みたい!』なんて言ってたけど…

本当は、この場所で交わした約束を覚えてて欲しいから。
だから敢えて、こんなこと言ったんじゃないかと思う。


ザーッ…


あの時の波の音が、いつまでも耳に残って消えてくれない。


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