ivory
「ユーウー。何で今日社長が事務所にいるか知ってる?」

営業電話を終えて化粧を直してるアユが言った。

「えー分からない。誰かとんだとか?」

アユ・レイカ・モエの3人が顔を見合わせて笑う。

「ビンゴ!!矢田君が昨日とんだらしいよ。」

矢田君・・・背が190近くて横にもかなり大きくて髪は今時珍しいパンチの店長。

よく彼オススメのブラックミュージックを教えてもらっていたのに。

私がこの店に入ってこれで6人がとんだ。

金に困った人間が集まるからなのか、夜に染まって心が病んで行くのかは分からないけど、気持ちは分からなくはなかった。

特に男性スタッフは仕事内容が女の子の送迎か電話応対しかないからかなり給料が安い。

それで社長に借金を作ってとんでしまう。

あるいは男性スタッフと内緒で付き合っていた女の子が(態度でバレバレだったが)男と仲良くとんだりもした。

彼らは今頃どこか遠くで幸せになっているのだろうか?

単なる想像だけど、似たようなところで働き、もっと辛い生活をしている気がした。

「ユウちゃん、レイカちゃん、準備お願いします。」

いつかまたいなくなるかもしれない山本がいつもの様にわざとらしく笑った。
< 12 / 30 >

この作品をシェア

pagetop